こんにちは。ボククボです。
2020年M-1グランプリで、ミルクボーイが見事優勝しました。
ミルクボーイといえば、
「オカンの好きな○○があるんやけど、名前がわからん」
→「一緒にかんがえたる」
という流れで○○の特徴をあげつつ、さりげなく貶してく
っていうのが定番です。
「湿布」というネタをYoutubeで見つけました。
「湿布に副作用なんかないの。だって本作用がないんやから。」
「湿布の効果を信じてるのはオッサンだけやから」
っていう一節で不覚にも笑ってしまいました。
ボククボは整形外科なのでたくさん処方しています。
副作用は知っていますが、(後述)
鎮痛効果についての論文はみたことないな、、、
効果は信じていますが、ボククボはオッサンなので、
客観性はありません。。
目次
湿布の副作用
湿布の副作用を忘れないうちに書いておきます。
少なくとも副作用があることは把握してます。
「光線過敏症」です。湿布に含まれる成分
代表的なのはケトプロフェン(ロキソニンの一般名)
であり、紫外線と反応することで皮膚炎を起こしえます。
確率は1-2%といったところでしょうか。
湿布でかぶれたという人には、処方しないようにするか
ジクロフェナク製剤(ナボールテープ)を通常処方します。
あとは、アスピリン(バファリンの優しいくない方の成分)
に反応して喘息が出てしまうタイプの人にも処方できません。
湿布の作用
職業柄、久〇製薬の主催する講演会などに参加します。
製薬会社主催の講演の前には、製品説明があるのが通例です。
〇光製薬の場合は、湿布の説明がお決まりですが、
湿布の粘着力、剥がれにくさなどの説明ばかりです。
そういえば、ボククボが医師になってから
湿布の有効性を証明したようなスライドは一回も
見たことがありません!
もちろん、臨床試験がなければ認可が下りないはずですので
確認してみます。
Hisami〇製薬の最新湿布剤の添付文書をみてみると
国内延べ231施設で総計1,206例について実施された1枚中ケトプロフェン20mg含有テープ剤の二重盲検及び一般臨床を含む臨床試験の概要は次のとおりである。(表3参照)
疾患名 | 使用量(1日量) | 改善率 %(症例数/症例数) 中等度改善以上 | 改善率 %(症例数/症例数) 軽度改善以上 |
腰痛症 | 2枚×1回 | 63.0%(155/246) | 89.8%(221/246) |
変形性関節症 | 1枚×1回 | 68.0%(155/228) | 93.4%(213/228) |
肩関節周囲炎 | 1枚×1回 | 61.1%(116/190) | 86.3%(164/190) |
腱・腱鞘炎 | 1枚×1回 | 69.4%( 25/ 36) | 83.3%( 30/ 36) |
腱周囲炎 | 1枚×1回 | 75.0%( 9/ 12) | 100.0%( 12/ 12) |
上腕骨上顆炎 | 1枚×1回 | 72.1%( 31/ 43) | 88.4%( 38/ 43) |
筋肉痛 | 1〜2枚×1回 | 90.7%(136/150) | 97.3%(146/150) |
外傷後の腫脹・疼痛注) | 1〜2枚×1回 | 83.3%( 35/ 42) | 97.6%( 41/ 42) |
それ以外の疾患に対する臨床試験は投与期間を2週間と設定し実施した(長期投与試験を除く)。
20mgのテープ剤認可時の臨床試験を用いているみたいです。
たぶん大昔の臨床試験ですね・・
参考資料も社内資料とのことで、閲覧は不可能です。
このデータだけだと自然経過でよくなってるものとの差は不明です。
続いて、関節リウマチに適応症が追加になった根拠です。
国内80施設で676例の関節リウマチ患者を対象にケトプロフェン20mg含有テープ剤を1日1回、1回1枚を2週間貼付したときの手関節における疼痛軽減効果をプラセボ対照ランダム化二重盲検試験により検討した結果、患者による疼痛VAS注)値変化率(平均値±標準偏差)はプラセボ(338例)25.453±31.191%、ケトプロフェン20mg含有テープ剤(338例)31.198±30.256%であり、両群間に有意差が認められた(対応のないt検定:p=0.0153)。なお、手関節での優越性は検証されたが、他の関節における優越性は確認されていない。
うーん、これも社内資料で閲覧不可能ですが、、
手関節だけなのに、「関節リウマチ」(全身の関節炎が起こりうる)
の適応ですか。。。甘い審査ですね。
湿布の効果:論文
Pubmedという医学論文検索サービスで湿布の効果を調べてみましたが、
引っかかるものはありません。(海外に湿布はほとんどないですからね)
経皮的なボルタレンとロキソニンの効果(塗り薬)について、
コンドロイチンのときもお世話になった
コクランレビューを読んでみます。
例によって、たくさんの臨床試験を統合して結果を出す
システマティックレビューです。
概要ですが、
- 39の臨床試験から10,631 人の被検者情報を抽出
- 痛みを評価
- ボルタレン・ロキソニンの皮膚製剤と偽薬もしくは他剤との比較
- 被検者は何らかの変形性関節症患者。
です。
結果は、
- 6-12週間塗ったものでは、ボルタレン、ロキソニンともに効果あり。
- 偽薬よりボルタレンでは(主に皮膚の)副作用が多かった
- ロキソニンでは副作用は偽薬と同じ程度
であって、結論をざっくりいうと、
変形性関節症の一部の人に効果があることは間違いないが、ほかの慢性疼痛に効くかどうかは確固たる根拠がないです。長期投与の研究では、偽薬でも効果があり、プラセボ効果も出やすい。
ってことみたいです。
まあ、湿布の効果が保証されたわけではないですけどね・・
湿布薬の今後
平成28年の薬価改定で、湿布処方の枚数制限が追加されました。
月に70枚までとなっています。
それ以前は湿布処方は無制限でしたので、大量の税金が湿布剤に使われ、
河のほとりにお住まいの方々によって転売されていました。
湿布薬は今後保険医療から外れるのではないかという噂がたえません。
おまけ
久〇製薬は大丈夫でしょうか。。
久〇製薬が開発中の薬について調べてみると、、
パーキンソン病や統合失調症、がん性疼痛治療薬、ADHD治療薬の
貼付剤を開発中のようです。
貼付剤で緩やかな血中濃度が保てれば、高齢の方でも安心ですね。
さすが一部上場企業です。心配無用でした。
さらに、アメリカで
変形性関節症に対して湿布の臨床試験を行っていて、
2020年度に第Ⅲ相試験(最終試験)を開始するとのこと
米国で認可されれば大変なことになりますね。
米国人の鎮痛剤といえば、第一選択が麻薬になっていて
余ったモルヒネの乱用が社会問題となっています。
反対に、ボルタレンなどによる腎障害は嫌われる傾向がありますが
湿布で副作用が小さいとなると大ヒットするかもしれません。
東京オリンピックのスペシャルパートナーですし、、
久〇製薬の株でも買っとこうかな。。