医師のホンネ・裏話

【医師のホンネ】高度障碍者の治療~植松被告の死刑判決~

更新日:

こんにちは。ぼくくぼです。

相模原市の障碍者施設「やまゆり園」で起きた、大量殺人

事件について、植松被告の控訴が取り下げられ、

死刑が確定しました。

障碍者に対する、差別的な発言は終始一貫しているようです。

病院には「やまゆり園」のような高度障碍者の方も時々

救急車で運ばれてきますので、その実態について

書きます。

障碍者施設

運ばれてくる障碍者施設は、だいたい都心部から離れた

山村部にあります。

家では介護が難しいような障碍者が入所しており、

幼少期に入所してから、何十年も施設外に出ていない方も

多数います。

そこでの生活中に、ケガをした、発熱したなどで

救急外来に搬送されてきます。

ボククボが診察したケース

施設長らしき方と常駐看護師が救急車に同乗で来院しました。

患者さんは50歳ぐらいの男性です。

高度の精神遅滞があるようで、ほぼ意思疎通は不可能な様子です。

頭部も正常の半分程度の大きさしかありません。眼も見えていないようです。

幼少期から入所されているようで、ご家族は都心部にお住まいです。

経緯としては、

右ふとももが変形していることに、見回り担当が気付いたそうです。

確かに右大腿部はぐにゃりと曲がり、腫れあがっていたため

骨折は肉眼的には明らかでした。

レントゲンでも大腿骨(太ももの骨)が真ん中で真っ二つに折れていたため

手術が必要です。

いつ骨折したのか?

骨折した時期と理由は不明です。

担当が気付いたとのことですが、理由は不明です。

暴行・虐待による骨折は、形から推察できることもありますが、

通常の骨折(らせん状)でした。

男性は、幼少期から寝たきりであり、骨脆弱性はひどいです。

さらに関節もガチガチに拘縮しているので

寝返りをさせるときに関節に回旋力が加わり、骨折したのでは

ないかと考えました。

どのみち治療方針には影響しませんし、邪推で警察に通報することは

誰も望んでいません。

まあ、誰かが介護したときにボキっという音はしたのでしょうが、、、、

治療方針

先ほど、手術が必要といいましたが、これは一般論です。

手術の目的は

  • ケガの後遺症の残さない、もしくは最小化する
  • 苦痛を取り除く

ことです。そのために、リスクを伴う手術をするわけです。

これを基に、この男性を診てみると

  • 最初から寝たきり
  • 関節は機能していない
  • 疼痛は感じていない様子

という感じでした。

疼痛は、意思疎通ができないのでなんとも言えないのですが、

骨折部を揺すってみてもニコニコしているので

大丈夫と判断しました。

このことから、簡易な固定で骨癒合(くっつくかない可能性もあり)

を待つことにしました。

入院後

入院後、数週間固定することでだいぶ骨折部は安定化し

(たぶんくっつきませんが)、骨が飛び出ることもなさそう

っていう状態になったため、施設に帰っていきました。

入院中、一応鎮痛剤を出していましたが効果があるのかわかりません。

ご家族の反応

ご家族に、治療説明をと思い、病院まで来てもらいました。

母(70-80歳)と兄(50-60歳)の方が、いらっしゃいましたが、

「方針はお任せします. オオゴトにしないで」

との希望でした。

「10歳まで生きられないと聞いていたのに、もう50歳ですよ。」

と愚痴をこぼした裏には、長年ご家族が受けてきた差別と

苦労が垣間見えました。。

まとめ

高度障碍者に対して、通常とは異なる治療を行った経験を

報告してみました。

一応、治療方針の決定には、理由付けを行い、周囲との相談

も行っています。差別にならないように、客観化するためです。

日常から接している介護士の方達に

「この人たちは普通とは違うから、、、」

という意識が芽生えても、仕方がないという印象はあります。

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