こんにちは。ぼくくぼです。
志村けんさんが、新型コロナウイルスにかかり、
人工呼吸器管理中とのニュースがありました。
ワイドショーのコメンテーターからは、
「人工呼吸器の増台が必要」
「重症者に適切にICUに割り当てるべき」
などの発言がみられ、実際の管理については、
あまり想像が及ばないようです。
もしあなたが人工呼吸器につながれたらどうなるか
について簡単に解説します。
目次
人工呼吸器管理になるとき
肺炎で入院になると血中の酸素濃度が下がり、
呼吸苦がでます。
通常は酸素の投与が開始されます。
2-10L/分などの流量で投与されます。少量で
症状が改善されればよいのですが、流量を上げても
血中酸素濃度が上がらない場合、
気管挿管、人工呼吸器管理による換気が必要になります。
(色々な場合分けや例外を省略して述べてます)
人工呼吸器管理になる瞬間
人工呼吸器管理なる際には
1.緊急:「挿管だ!」
2.非緊急:「。。。挿管しますか。。」
みたいな二つの場合があります。
1.の場合は、おそらくあなたは意識もないでしょうから
挿管時のことは記憶にないでしょう。
2.の場合でも、十分な鎮静剤・鎮痛剤を投与の上
行われるので、喉が血だらけになっても、挿管ブレードで
歯が折れても、覚えていないでしょう。
人工呼吸器管理中
人工呼吸器につながれると、基本的には
ICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)という
特別なユニットに入ります。
人工呼吸器管理中は、気管に管を突っ込まれて
機械に強制的に換気させられるわけで、
患者さんは辛くて起きていられません。
そのため、鎮静剤で眠ったような状態にさせます。
行われる治療
エラーが起きたらすぐ対応しないといけないですし
少なくとも看護師が、目を離してはいけないからです。
(ですから、人工呼吸器管理が病院に増えたからと言って
すぐに助かる患者が増えるわけではありません。)
- 4-6時間ごとの採血
- 一日2回程度のレントゲン
- 動脈にセンサを入れて、24時間血圧モニタリング
- 酸素飽和度モニタリング
- 心電図モニタリング
で、異常がないかを確認しながら
問題点を整理して一つ一つ解決していきます。
(人工呼吸器の設定、抗菌薬などの投与量・種類決定
電解質補正、体液量補正、輸血、栄養剤の注入など、、、)
こういった全身管理をしながら重症期から脱するのを
待つわけです。
これらの意思決定は医師が行うので、主治医制だと
持ちませんので、(ド田舎と心臓血管外科以外は)
医師もシフト制になります。
鎮静について
患者さんが辛いとこまるので、鎮静・鎮痛剤で眠らせますが、
投与量が多いと呼吸も止まります。
呼吸が止まっても、機械が肺を膨らませてくれるので
大丈夫なのですが、過鎮静にはさまざまな障害があります。
(省略します。)
もちろん、投与が不十分なのはかわいそうです。
といったわけで、いい感じにウトウトさせる必要があります。
鎮静の深度を客観的に評価するのが以下のRASSです。
ステップ1:30秒間、患者を観察する。これ(視診のみ)によりスコア0~+4を判定する。ステップ2:
1)大声で名前を呼ぶか、開眼するように言う。
2)10秒以上アイ・コンタクトができなければ繰り返す。以上2項目(呼びかけ刺激)によりスコア-1~-3を判定する。
3)動きが見られなければ、肩を揺するか、胸骨を摩擦する。これ(身体刺激)によりスコア-4、-5を判定する。
スコア | 用 語 | 説 明 | |
+4 | 好戦的な | 明らかに好戦的な、暴力的な、スタッフに対する差し迫った危険 | |
+3 | 非常に興奮した | チューブ類またはカテーテル類を自己抜去;攻撃的な | |
+2 | 興奮した | 頻繁な非意図的な運動、人工呼吸器ファイティング | |
+1 | 落ち着きのない | 不安で絶えずそわそわしている、しかし動きは攻撃的でも活発でもない | |
0 | 意識清明な 落ち着いている |
||
-1 | 傾眠状態 | 完全に清明ではないが、呼びかけに10秒以上の開眼及びアイ・コンタクトで応答する | 呼びかけ 刺激 |
-2 | 軽い鎮静状態 | 呼びかけに10秒未満のアイ・コンタクトで応答 | 呼びかけ 刺激 |
-3 | 中等度鎮静 | 状態呼びかけに動きまたは開眼で応答するがアイ・コンタクトなし | 呼びかけ 刺激 |
-4 | 深い鎮静状態 | 呼びかけに無反応、しかし、身体刺激で動きまたは開眼 | 身体刺激 |
-5 | 昏睡 | 呼びかけにも身体刺激にも無反応 | 身体刺激 |
どこのICUでも看護師が
1時間に一回ぐらいは記録を取っているはずです。
これをもとに、プロポフォール(マイケルジャクソンのやつ)
やモルヒネを調整します。
人工呼吸器管理が1週間つづくと
数日で離脱できればいいのですが、
人工呼吸器管理が1週間以上つづくような長期戦になると
チューブによる潰瘍の問題など生じますので、
気管切開(喉をきってそこからチューブを入れる)
を行うことになります。
いわゆる植物状態の方などはこういう形になっている
と思います。
また、長期戦後に離脱できても、高齢の方は、
筋力の消耗、認知症の進行が激しく、元通りの生活
に戻ることはあまり期待できません。
高齢でもともと活動度が高くない方に
人工呼吸器管理などお勧めできないのはこういう
理由もあります。
まとめ
呼吸器管理において、最後の強力な手段です。
若年の体力のある人の急性期感染症においては
非常に有効な手段と思います。
人工呼吸器管理中はあなたは、意思を伝えることは
できませんので、医師や呼吸器に身を任せるしかありません。
最近の呼吸器は自動運転能力も非常に発達しております。
最後に、志村けんさんの治療がうまくいくことを祈ります。