医師のホンネ・裏話

整形外科手術が失敗する意外なリスク因子

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こんにちは。ボククボです。

整形外科医として、年間数百件の手術をやっていますが、

手術を受けられる患者さんとして最も心配するのは

「手術が失敗するのではないか?」

ということだと思います。

  • 手術の失敗とはなにか?
  • 失敗する手術の意外なリスク因子

についてお話します。

まあ、小話程度の内容です。

整形外科の手術で失敗とは?

整形外科手術の特色

手術と聞けば、すぐに思い浮かぶのが、
ガンの摘出手術や心臓血管の手術でしょうか。

このような手術は、病気の治癒や延命を目指して行われます。

一方、整形外科の手術は、骨折や関節、背骨の手術であり、

筋肉や骨の悪性腫瘍(肉腫と言います)や重度外傷などは除いて、

生死にかかわることはありません。

基本的に整形外科手術の目的は、

「関節や神経が原因の痛みをとったり、機能を回復させること」

です。

カッコいい言い方をすると機能再建外科なわけです。

整形外科手術の成功

整形外科手術において成功は、
手術部位が正常に近い状態で治癒し、痛みなく動くことです。

しかし、これは医師目線でいう成功です。

患者さんの立場で言えば、
使ってみてその機能に満足なら成功なのです。

骨がガタガタにくっついても、動きが悪くても

患者さんが、
「まあまあだな。なおってよかった。」

と思えばいいのです。

余談ですが、腹部外科ってなかなか手術の上手い下手が
他の医師や患者さんに分かりづらい領域だなー、と思います。

心臓血管外科だと、術後合併症率とかで
他科から見ててもなんとなくわかりますが。。

腸の縫合がガタガタでも術後検査でわかるわけではないですしね。
整形外科だと、レントゲンで丸わかりです。

整形外科手術で失敗のリスク因子

整形外科手術といっても色々あるので、

全部に共通したリスク因子は少ないですが、

骨がくっつかない、縫合した傷がくっつかないと
関節の機能どころじゃありません。そういった意味では、

  • 糖尿病
  • タバコ
  • 肥満

は絶対のリスク因子です。

こういったリスク因子はわかりやすいと思います。

患者不満⇛失敗 となるリスク

患者さんが満足出来ないと失敗となると上で述べました。

これに関連するリスク因子としては

  • うつ病、うつ傾向
  • 労災

があげられます。

うつ病

うつ病の方が手術を希望された場合、かなり慎重になります。
どちらかというと、

「日常生活は送れているけど、この体をもうすこし良くしてほしい」

という要望であればお受けできません。
医師にとっても、患者さん自身にも不幸な結果が待っているからです。

やむを得ない場合では、
「手術により得られるものと失うもの」
を分けて説明し、手術の限界を強調することが多いです。

精神的には辛い状況ですので
「手術が私をすべてから救ってくれる」
という期待をされては、どんな手術でも満足にはならないのです。

労災

労災患者さんも同様です。
基本的に労災患者さんは被害者です。

昨日まで何不自由ない生活を送っていたのに、
突然怪我や病気を背負わされているのです。

もちろん、医者には元通りの生活、機能に戻すことを
期待しています。

十分な説明がなければ、
「悪い会社、悪い医者に巡り合った被害者」

という構図が頭に出来上がり、ほぼ正常にもどっても
不満点ばかりに目が行くようになるのです。

手術前の時点で、現状を受け止めてもらい、
残すべき機能を前向きに選択してもらう必要があるのです。

労災、うつに関連した研究

一つ研究を紹介してみます。
(引用:Anderson et. al. Spine 2015
Clinical Depression Is a Strong Predictor of Poor
Lumbar Fusion Outcomes Among Workers’
Compensation Subjects


これは、オハイオ州における労災者の診療データ
10年分を解析したもので

腰椎固定術をうけた、うつ病も合併している労災者123例と
うつ病はない労災者2676例の成績を比較しています。

術後6ヶ月時の復職率は、うつ病合併群のほうが
非うつ病群の1/3にも満たなかったという結果が出ています。

同じデータベースを用いた研究では、
(引用:Locquet et.al. Orthopedics 2020
Shorter Time to Surgery Is Associated With Better Outcomes for Spondylolisthesis in the Workers' Compensation Population.

術前のリハビリなどを長期間行わずに、早めに
手術をしたほうが、成績がよいということが示されています。

長期のリハビリで痛みが長引けば、悲観的になりがちですので
患者さんの覚悟があれば、早めに決着をつける心意気も必要ですね。

まとめ

とりとめのない話になりましたが、

整形外科医として意識している「患者満足度」に
関連したことについてのべてみました。

決して、うつ病や労災患者さんが嫌いなわけではありません
「病を憎んで、人を憎まず」です。

客観的にみて、不満足にさせがちではあるので、
特別な配慮はもって診療しています。



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