医療ニュース解説

【医師考察】フライデー記事によるテラ株価暴落の真相

更新日:

こんにちは。

整形外科医師ブロガーのボククボです。

樹状細胞ワクチンによる、がん治療技術などを提供する

株式会社「テラ」から、

新型コロナウイルスに対する治療法確立を目指す

という発表があり、

わずか1か月の間に、株価が10倍以上に膨れ上がりました。

その矢先、6/12発売の週刊誌「フライデー」により、

「臨床試験の実態がない」

旨の報道がなされ、同日の株価は急落しています。

この騒動についてまとめてみました。

最後に記載した情報はおそらく有益だと思います。

多分に個人的意見も含まれますので、
株式売買の参考にはしないでください。

ちなみにボククボはテラの株を持っていません。

間葉系幹細胞治療

間葉系幹細胞とは、

なんにでも分化(変身)できる、
「幹細胞」よりは通常の細胞っぽい幹細胞で、

骨や筋肉、神経に分化することを
運命づけられている幹細胞です。

これまでの基礎研究では、

間葉系幹細胞を血中に大量に注射することにより、

「免疫調整能」があるのではないか?

と言われてきました。

COVID-19による死亡は、

免疫能の暴走=サイトカインストーム
(炎症物質の嵐という意味です)

が原因の多くを占めることから、

間葉系幹細胞注射による治療効果が期待されたわけです。

アビガンなどの抗ウイルス薬は、増殖抑制効果がありますが、

重症化して、人工呼吸器につながれている方には、
効果は弱いのではないかと言われています。

間葉系幹細胞治療はうさんくさい?

結論をいうと、あまりうさん臭い治療ではないようで

先行研究もあります。

中国の北京友安病院で、7例のCOVID-19重症患者に

14日間かけて間葉系幹細胞(MSC)が投与された
という論文があります。

Transplantation of ACE2- Mesenchymal Stem Cells Improves the Outcome of Patients with COVID-19 Pneumonia

Aging Dis. 2020 Apr; 11(2): 216–228.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7069465/

比較対象はありませんが、

4/7例は回復しており、重症患者には効果が期待できると

結論しています。

ちなみにこの研究は、
治療施設の倫理委員会の承認を得ており、

中国の治験データベースにも登録されています。

培養細胞は、上海大学から提供されているようです。

「免疫調整」や「幹細胞」ときくと、うさん臭い研究も
混じってきますが、

間葉系幹細胞治療はある程度、期待されている治療のようです。

ちなみに、スペインでもMSCによる新型コロナウイルス治療の
臨床研究が行われています。

フライデー記事の内容

フライデー記事は見開き2ページだけでした。

内容を要約すると

  • 治験施設の1つであるトラスカラ総合病院に電話した
  • 治験責任医師のアレックス・オルティスに問い合わせたが
    病院の事務員に、その人はいないといわれた
  • その事務員は、治験のことをしらなかった
  • Facebookでオルティス医師に連絡したら、
    「患者のプライバシーがあるので明かせない」
    「6/9になれば詳細公表できる」

というものでした。

事務員って誰なんでしょうね。
受付のお姉ちゃんじゃないでしょうし。

共同研究会社のセネ社からは
「オルティス医師は厳密には雇用されていないが、治験は行っている」
という回答だったようです。

日本でも無給の研究員はいますからね。

ありうると思います。

Clinical Trials.govで検索

ClinicalTrials.govは、
米国国立公衆衛生研究所 (NIH)と米国医薬食品局 (FDA) が共同で運営する

治験と臨床研究に関する情報を提供している
データベースです。

新規薬剤の治験であればたいていのっていると思っていいでしょう。

このデータベース上で

「cell」「COVID」のキーワードでメキシコで行われている試験
を検索してみました。(日時:6/12)

検索結果は。。。

MSCを経静脈投与するStudyがヒットしました!
(臨床試験番号:NCT04416139)

試験開始は、5/1.

テラの臨床研究開始が4/27ですから

時系列的にも一致します。

しかし、肝心の研究施設は

’Nutricion Salvador Zubiran’

テラの5/14IRによると

’メキシコ最大級の展示場を急遽改装したコロナウイルス感染症専門病院
を含む3施設’

ということでしたが、

藤森氏の現地報告➂の写真を見ると

’Hospital de Respuesta Inmediata COVID-19’

と記載されているので違うようです。

メキシコシティのこの施設が含まれている可能性は0ではありませんが。

臍帯血間葉系幹細胞を使っている治験がメキシコに二つある
可能性は低いようにも思います。

テラのIRとの相違点

上記データベースの研究が、テラの研究という保証はありませんが

他に候補もないので、

一応

このデータベースとIRとの相違点を上げてみます。

サポーター企業

まず、研究協力の企業などのサポーターの欄に

テラやセネ社の記載がありません。

1件あたり、200万円の費用をテラが負担している

とされていましたが、どうなのでしょうか?

被検者数

データベースでは、予定被験者数は10例です。

対照群はありません。

IRでは、症例群50例、対照群25例の予定

とされていました。

しかも、データベース上はPhase2であり、

一般的には薬事承認に直結する研究ではありません。

10例のPhase2のstudyにつづいて、Phase3の比較研究を

行うのかもしれませんが、現段階では不明です。

施設数

テラのIRでは3施設共同研究の予定とされていました。

データベースでは、1施設のみです。

フライデー記事にある通り、
トラスカラ総合病院は、このデータベース上は治験施設にありません。

保健省が認可したのはハリスコ州とのことですが、
仮にもFDA承認を目指すと断言しているのですから

clinical trials.govに記載されているのが普通と思います。

まあ、メキシコですから

遅れてても大丈夫なのでしょうか?

まとめ/個人の見解

MSC治療は、重症のCOVID-19治療において

ある程度、全世界で期待される治療ではあるようです。

ロート製薬も脂肪幹細胞を用いた同様の研究を始めています。

メキシコにおける臨床試験も、データベース上では

似た研究は見つけることは可能でしたが、

IRの条件に一致するものはありません。

(*テラの臨床試験とは無関係?)

研究計画が不明瞭な理由は?

単純な話、

担当のメキシコ人が適当だったり、
新型コロナウイルス治療で
研究どころではないのかもしれません。

そうでないとすれば、

臨床研究開始のニュースをいち早く得ることが

主目的だった可能性があります。

そのため、研究計画の策定や申請手続き自体が
おろそかになっている可能性があります。

メキシコで開始したのも、
日本では培養の認可が下りるのに時間がかかるためと
思われます。

6/13のIRでは、メキシコ・米国で認可されたものを
特例で日本に薬事承認してもらうとのことですが。。。

今のところ、
日本と同等の医療レベルである米国での承認を求める
姿勢はみられず(治験申請していない)

疑問符が付きます。

最後に、個人的に思いついたシナリオを書いておきます。

治験ではない

4/27のIRでの
「薬事申請する国や地域はまだ不明」という文言は

最大のポイントです。

つまり、今回の研究は治験ではないのでしょうか?

6/13セネジェニックス・ジャパンからのIRでは’治験’という
言葉が使われていますが、

テラのIRでは、一貫して’臨床研究’、’臨床試験’という言葉が
使われています。

臨床試験いくら成功しても、
少なくとも米国や日本で薬事承認されることはありません。

(メキシコで特例での承認を目指しているのかもしれませんが。)

(注意:6/15追記参照)

その分、研究計画や申請が十分練られていなくても
ある程度簡単に始めることはできます。

国際新型コロナウイルス細胞治療研究会の発足時のインタビューでは、

メキシコでの臨床試験後に、夏ごろ日本の大学病院で治験を開始

とされていました。

治験開始でなくても、臨床研究開始とIRすれば、
株価への影響は大きく、

これを意図的にテラが狙っているのであれば
「なかなかの策略」です。

本当に、今後
治験開始を目指しているのかもしれませんが、

いずれにしても、医療先進国で通用する方法ではありません。

今後の報道に注目していきます。

6/13追記

テラから6/13に、

ハリスコ州のメキシコ保険省からの認可をうけて

臨床試験を実施中とのIRがでました。

認可を受けたのは6/9だそうです。

5月中旬に投与されて、回復したという患者の報告がありましたが、
臨床試験承認前に投与したのでしょうか?

謎は深まるばかりです。

しかもフライデー報道にあった、トラスカラ総合病院は
もちろんトラスカラ州にありますし。。。

いまだに臨床試験を行っている医療機関名は
明かされないままでもあり、プロトコルはどこにも公開されていません。

臨床試験の詳細を、早く
誰にでも閲覧できるようにしてほしいものです。

6/15追記

またまた追記です。

セネジェネティクス・ジャパンから6/15

お知らせがでました。

  • メキシコでの臨床試験は’治験’にあたる
  • 治験後にイダルゴ州全面協力の下、メキシコでの薬事承認を目指す
  • 治験後の品質確認はイダルゴ州立病院で行う
  • メキシコでの承認が得られれば、ブラジル含めたの中南米で投与できる
  • このお知らせはテラも内容を確認済み

という旨でした。

このブログ読んだのかな?

といったぐらいの回答でした。

アメリカでの薬事承認、日本での承認については

触れられてません。

しかし、治験が終わる前に薬事申請の予定ですなんて
なかなか勢いがありますね。。。



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